自己免疫性肝炎③(入院生活その1)

闘病日記

※この記事は前後編の前編(入院生活その1)です。


今回の記事では、入院初日の様子から、連休を挟んで治療が始まるまでのことをお話します。

不安なスタートと姉の支え

いよいよ入院当日。
猫たちと家のことは娘に任せ、私は病院へ向かいました。
ありがたいことに、姉が車で送ってくれました。

病院に到着後、入院手続きを済ませて、まずは病室へ。
それから姉と一緒に、担当医の先生から今回の治療内容や流れの説明を受けました。
…が、正直、この時の説明はあまりよく覚えていません。
難しい言葉ばかりだったし、看護師である姉が一緒に聞いてくれていたので、どこか安心して頼りきっていた部分もあったと思います。

説明はあまり聞いてないものの、私は書類をきちんと保管するタイプなので、その時に渡された3つの「治療説明書」は今も手元に残っています。

  • ステロイドパルス療法
  • 造影CT検査
  • 肝生検・腫瘍生検

どの書類にも、病名欄には「急性肝炎」と記載されていました。(この時点では、自己免疫性肝炎とはまだ確定していません)

「ステロイドパルス療法」って何…?
怖い…。
というか、ステロイドってすごく強くて、副作用が怖い薬じゃなかったっけ?
良くない噂ばかり聞いたことがあって、とにかく「ステロイド」という言葉に強い恐怖心がありました。

先生の説明が終わって書類に署名をし、ここで姉とはお別れ。
(心強かった。本当にありがとう。猫たちのことも、よろしくね)

姉を病院の廊下で見送り、私は再び病室へ。
しばらくすると、看護師さん(あるいは事務の方だったかも)が病棟の説明や、入院中の生活について色々と案内してくれました。

今回は4人部屋。
でも、私ひとりだけの状態で、しかも窓際の明るい場所。
まるで個室のように快適で、大部屋なのにラッキーなスタートでした。


検査と激しい吐き気

まず最初に行ったのは、心電図・レントゲン・造影CT。
それが終わってから、肝生検(かんせいけん)を受けました。

造影CTは初めての経験。
腕から造影剤を入れると、その部分がじわっと熱くなり、少しして股間のあたりまで熱さが広がっていくのがはっきりと分かりました。
まるで、血液が全身を巡るのを体感するような感覚で、なんとも言えない、気持ちの悪さがありました。

次に受けたのは、肝生検。
これは、局所麻酔をしてから、長い針のような器具で肝臓の細胞をとる検査です。
その前に、緊張をほぐすための筋肉注射をしたのですが…これが、とにかく痛い!💦

先生がエコーで肝臓の位置を確認しながら、右脇腹から針を刺します。
「さぞかし痛いんだろうな…」と構えていましたが、麻酔が効いていたので痛みはまったくなく、「何かが刺さっているような違和感」だけで済みました。

肝生検は思っていたよりあっという間に終わり、その後は4時間ベッドで安静に。
無事に終えて、ようやく自由に動けるようになりました。

でも――
まだ治療が始まっていない私の体は、激しい頭痛や吐き気、お腹のかゆみと闘っている状態。
間もなく夕食が運ばれてきたけれど、あまりにも吐き気が強くて、とても食べられる気がしません…。

でも、ここ何日かほとんど食べていなかったし、実はお腹はすごく減っていて。
少しでも何か…と思って、パンとゼリーだけ口にしてみたのですが――

食べた直後、猛烈な吐き気に襲われました。
「これは…噴水みたいに出てくるかも…!」
とっさに口を押さえて、必死に我慢しました。ここで吐いたら、看護師さんに迷惑をかけてしまうと思って…。

「これからは、何かを口にする前にビニール袋を用意しよう」と強く思いました。

その日の夕食後には、「ウルソデオキシコール酸錠(肝臓の機能を改善するお薬)」が処方されましたが、その後も吐き気、頭痛、そしてお腹のかゆみがひどくて、結局その夜は一睡もできませんでした。


進まない治療と地獄の3連休

3連休を恨む

ずっと続く激しい頭痛、吐き気、お腹のかゆみ…。
ご飯も食べられず、夜も眠れない日々が続くと、人はだんだんとイライラしてくるものです。

最初に「ステロイド治療を行います」と聞いてある程度覚悟はしていましたが、治療は始まらず、出される薬は相変わらず「ウルソデオキシコール酸錠」だけ。
少しでも楽になればよかったのですが、私の体感としては全く変化がありませんでした。

「どうして先生は早くステロイドの治療を始めてくれないんだろう…」
一瞬、その怒りが医師に向かいそうになりましたが、すぐに思い直しました。

先生には、退院までの全体像が見えていて、すべてを考慮しての判断なのだ。
これは、私のせいでも先生のせいでもない。誰のせいでもない。
――ただ、早くこの苦しみから解放されたい。それだけなのです。

しかし、そんな願いも虚しく、タイミング悪く「3連休」に突入。
緊急時の対応はしてくれるものの、基本的に医師は不在で、最低でも3日間は治療が進まないのです。

後から見返した姉とのLINEには、「3連休を恨む…」という言葉が残っていました。
やり場のないイライラを、とにかく3連休のせいにして、なんとか気持ちを整理しようとしていたのです。


病気の時は遠慮せず

しかし、さすがに限界で、ついに私は看護師さん「頭痛薬、吐き気止め、かゆみ止めが欲しいです」と訴えました。

連休中だったので、医師に連絡を取るのに時間がかかりました。
「ああ…連休前にお願いしておけばよかった」と、後悔しました。

ここで、これから入院される方への小さなアドバイスです。

薬が必要なときは、遠慮せず自分から具体的に伝えた方がいい!

私はずっと「気持ち悪い」や「吐き気がすごくて食べられない」と、自分の今の状態を伝えていましたが、
「先生に報告しておきますね」で終わってしまう看護師さんもいれば、
「吐き気止め、出してもらいましょうか?」と提案してくれる方もいて、対応は人それぞれ。

だからこそ、自分の要望は、遠慮せずにできるだけ具体的に伝えた方がいいと、身をもって学びました。

当時の私は「治療の方針もあるし、余計な薬を要求してはいけないかも」と遠慮してしまったのですが、
結果的にそれがこの3連休の地獄を招いてしまったのかもしれません…。


救世主の吐き気止めと忘れられないそうめんの味

それでも、やっと処方してもらったお薬(頭痛薬・吐き気止め・かゆみ止め)のおかげで、少しずつ体が楽になってきました。
食事にそうめんが出てきた時に、入院後初めて「食べたい」と思いました。

「また吐くかも…」という恐怖心もありつつ、思い切って一口食べてみると…
冷たくて…なんておいしい…!
あの時のそうめんの味は、今でもはっきり覚えています。

吐き気止めは驚くほど効いて、「もう治ったのかも」と錯覚するくらい、ピタッと吐き気が収まりました。

でも――
根本的な原因は肝臓。
薬の効果が切れると、すぐに吐き気が戻ってきます。

なぜか、あの時のそうめんだけは食べられたんです。
(空腹が勝ったのかもしれません)

でもそれ以降は、「出汁」の匂いにずっと悩まされました。


出汁の匂いが…

入院直後に栄養士さんが来てくれて、
「少しでも食べやすい和食メニューにしましょうか?」と提案してくれて、私はそれに同意しました。

でもあとになって、それを後悔しました。

なぜなら…
出汁の匂いが、茶色い尿(ビリルビン尿)の匂いと少し似ていたのです。
あの甘ったるくて絶妙に嫌な匂い――分かる人には分かると思います。

だから、煮魚やうどんの匂いを嗅ぐたびに吐き気が増し、
食事の蓋を開けるのも怖くて、最初から開けないようにしました。

それでも、吐き気止めのおかげで、出汁系以外のものは少しずつ食べられるようになり、
空腹が和らいだことで、少し眠ることもできました。


白い便の思い出

あの日、白い便が出て以降、ずっと出ていなかったのに、少し食べられるようになったおかげか、やっとお通じが!

しかも、今度は「ごく薄い茶色」。
やっと色つきの便が出たのです!

看護師さんに「白い便が出たら写真を撮るので、教えてください」と言われていたので、
白ではなかったけれど、一応報告。

看護師さんにトイレまで来てもらい、写真を撮ってもらいましたが…
やっぱり他人に見られるのは恥ずかしかったです。
(きっと看護師さんは慣れてると思いますけど…)

今思えば、入院前に自宅で出たあの「白い便」は貴重だったのですね…
もう出ることは一生ないかもしれない貴重な白い便。記念写真、撮っとけばよかったなー。


急性肝炎の可能性

連休中でも、採血はありました。
肝臓の数値は、ほんの少しずつですが下がっていたようです。

薬は「ウルソデオキシコール酸錠」しか飲んでいないのに、数値が下がるなんて…。
「自己免疫性肝炎の可能性が高い」とは言われていたけれど、
まだ「急性肝炎」の可能性もゼロではなく、
もしかしたら先生は、ステロイドを使わずに済む可能性にかけているのかもしれない――

そう思ったことで、連休中に治療が進まなかった理由に、少しだけ納得できました。


ようやく始まったステロイド治療

私がその苦しさをどうやって耐え抜いたのかは、よく覚えていませんが、時間は必ず流れていきます。
ようやく――連休が明けました。

休み明けの病棟は、看護師さんの人数も増えて、活気が戻ってきます。
入院して5日目。ついに医師から告げられました。

「明日からステロイド治療をはじめます」

やはり、ウルソデオキシコール酸だけでは、肝臓の数値は思うように下がらなかったようです。

この時の私は、ステロイドへの恐怖よりも、
とにかくこの頭痛と吐き気の苦しみから解放されたい気持ちの方が強くて――

「やっとか…」と、正直ホッとしました。


翌朝。
「いよいよステロイド治療が始まる…」と、少し緊張していた私。
でも、点滴での“パルス療法”ではなく、内服薬(飲み薬)でした。
治療方針が変わったのかな?と少し戸惑いました。

この日出されたのは、

  • 朝食後:プレドニン錠(ステロイド) 20mg(5mg×4錠)
  • 昼食後:10mg(5mg×2錠)
    → 合計30mg

初めての服用は、「もう後戻りできない薬を飲む」ような気がして、すごく勇気がいりました。
「これを飲んだら、体に何か急な異変が起きるんじゃないか…」
ナースコールを手元に置いて、ドキドキしながら飲みました。

――でも、特に何も起こらず。

むしろ何もなさすぎて「え?私、本当に飲んだよね?」と不安になるほど。

初めてのステロイド服用は、あっけないほど静かに終わったのでした。


この頃には、かゆみ止めや眠剤などのおかげで、
お腹の湿疹や不眠、頭痛もだいぶ軽減してきていました。

まだ吐き気や、胃のあたりの違和感は残っていましたが、
ステロイドを飲み始めてから、明らかに症状が軽くなっていき、
「体が楽になってきた…」という感覚をはっきりと感じることができました。


激しい吐き気、頭痛、お腹のかゆみで眠れなかった日々。
本当に、ただただ、つらくて、しんどくて――

でも、突然の吐き気に襲われたあの日から20日。
ようやく、体が少しずつ楽になってきて、涙が出そうになりました。


ステロイドは、強力な効果がある反面、様々な副作用もある薬。
これからどうなっていくのか、不安がないわけではありません。

でも――
あの地獄のような苦しみから私を救ってくれたこの薬の効果は、
本当に「すごい」と、心から思いました。


プレドニンを飲み始めてから、痒みや不眠も少しずつおさまり、ようやく楽になってきた私。
ステロイドという薬のすごさと怖さ、その両方を感じ始めた頃でした。
次回は、入院後半の出来事と、退院までの道のりについてお話します。

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